【日経新聞2014年4月17日 大機小機より】

「解雇の金銭補償ルールを」

 成長戦略の大きな柱の一つに、対日投資促進のための解雇ルール明確化がある。日本の解雇規制は厳しいといわれるが、正確には「不透明」と言うべきだ。労働契約法は「合理性なき解雇は無効」というだけで、肝心の合理性の基準や、その際の金銭補償額の目安を何も示していない。

 9日の産業競争力会議の雇用・人材分科会に厚生労働省が提出した資料では、裁判とそれ以外の手段で、労働者の解雇補償金の比較が示された。

 件数がもっとも多い労働委員会の仲裁では、100万円未満が8割強で、4分の1は20万円未満である。他方、裁判で解雇無効を受けた後の企業との和解では、7割が100万円超で、中には1億円以上もある。

 豊富な資金をもつ大企業の労働組合の労働者は、解雇無効判決で多額の和解金を得られやすい。他方で、裁判費用を負担しにくい中小企業では、僅かの補償で解雇され、労働者間に大きな格差がある。

 この是正のためには、先進国の常識である解雇の金銭補償の枠組みを法律で定める必要がある。しかし、「カネさえ払えば解雇してよいのか」という労働組合と、現状よりも補償金が増えるであろう中小企業経営者の反対で、いつまでも実現しない。十分な補償金をもらえずに解雇される中小企業の労働者だけが無視されている格好だ。

 これは解雇紛争に関わる裁判所の責任も大きい。労働審判などで合意できず、最終判断を下す裁判官が、欧州のように解雇無効の際の補償金額を示さない。これは離婚時の養育費や交通事故などの補償金額を明確に示す裁判と大きく異なる。

 企業別に組織された日本の労働組合では、欧米の労働市場と違って労使間に大きな利害対立なはい。むしろ、企業の内の正社員と外の非正社員や、大企業と中小企業の労働者間の「労・労対立」が、より深刻な問題だ。解雇の金銭補償の法定化は、労働者間の格差是正にとっても必要である。

 それにもかかわらず、厚労省の労働政策審議会は、労使代表の利害調整の場にすぎず、「弱者」である中小企業や非正規の労働者の声は届かない。むしろ首相直轄で、社会保障制度改革国民会議のような中立的な立場の専門家で構成する機関を置き、抜本的な労働市場改革の方向性を示すべきである。

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ながまつ
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