労働審判制のみえてきた課題(日経新聞2014年12月12日付社説)

解雇や残業代の不払いをめぐる争いなど、個人と雇い主の間のいわゆる個別労働紛争を解決する労働審判制度が来年、10年目を迎える。労働紛争を迅速に処理する仕組みとして定着してきたが、課題もみえる。より良い制度へ改善に努めたい。

労働審判は全国の地方裁判所で調停や審判を行う制度だ。裁判官である審判官1人と、労働問題に関する専門知識や経験を持った民間出身の審判員2人が合議で紛争処理にあたる。審判員は労使双方から1人ずつ出る。

まず調停の成立を探り、成立しない場合は審判を下す。審判のための審理は原則3回以内で終えるため早めの決着が見込める。審判内容に当事者のどちらかが不服を申し立てれば正式の裁判に移る。

労働審判制度ができた背景にはセクハラやパワハラなどを含めた個別労働紛争の増加がある。

地裁での労働紛争処理の件数をみると2009年以降、労働審判が裁判を上回っている。13年は裁判の3200件強に対し労働審判は3700件弱あった。紛争解決の機会を広げているといえよう。

中小企業経営者らが労働審判を経験することでコンプライアンス(法令順守)を意識する例も少なくない。これも制度の効果だ。

一方で紛争処理が、「早期決着を図るあまり、最初から金銭による解決に誘導していると思われる場合がある」との指摘もある。

解雇などをめぐる争いで労働者が職場復帰を望むなら、それに沿った解決をめざすのが筋だ。審判官、審判員や当事者の代理人である弁護士はこの点を忘れるべきではないだろう。

審判員は経団連と連合が人事労務の管理職や労働組合幹部らを推薦し、裁判所が任命する。現在、全国で1400人を超えるが、退職者も多く女性はわずかだ。

40代社員らの起用に努めてはどうか。現場第一線にいる人を増やせば企業に労働紛争を未然に防ぐ意識を広げられる。女性審判員の視点も重要だ。増員を急ぎたい。

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ながまつ
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「頭は低く、目は高く、口を慎んで心広く、孝を原点として他を益す」

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